イジワルな初恋


十年の時を経て、やっとあのときの返事をすることができた。

だけど……。



「今の俺は、十年前の答えを今さら聞きたいわけじゃない……。
仕事の相談なら、俺より部長の方がいいだろ……」


そう言い残し、中矢君は電車に乗り込んだ。



ホームに取り残された私の目に映るのは、だんだんと霞んでいく彼の背中。


冷たい涙が頬を伝い、溢れ落ちた時

私はようやく気がついたんだ。



私が思っていたよりも


十年という時間が


とても長かったことに……。





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