さよならは言わない
友美と私が親友同士と知っているかどうかは分からない。
もしかしたら尊には知られているかもしれないが。
「友美は学生時代からの親友だから安心して」
何を安心すると言うのか。尊には関係のない言葉だったかもしれない。
「分かった。絵里をよろしく頼む」
「任せて」
営業一課から江島さんの視線を浴びていても、尊は江島さんには見向きもせずに私だけを見てくれている。
それは嬉しいことではあるけれど、彼女とは円満に別れている様子はなく尊の一方的な別れ、つまり、私の時の様に彼女も捨てられたのではないかと思った。
彼女はもういいの?と、何度口に出して言いそうになったかしれない。
だけど、私は彼女と尊の関係に口を出せる立場にないと分かっている。
だから、聞きたいことも聞けないし言いたいことも言えない。
尊は私の顔を見ると「大丈夫そうだな」と小さな声が聞こえた。
すると営業課から出て行った。
去って行く尊の後姿を見て私の胸は熱くなったが、尊を私の為に周囲からの評価を下げさせるわけにはいかない。
尊には尊の仕事があるのだから私はその仕事の邪魔をしてはいけない。
私は尊のお荷物になりたくないのだから尊を縛りつけるようなことをしてはいけない。
「ごめんね、友美まで迷惑かけてしまって」
「あら、私はあのいけ好かない野郎の部屋を覗いてみたいだけよ。野次馬根性よ」
私を気遣って話してくれる友美はやはり私の良き親友だ。