さよならは言わない
私の診察を終えるのを待合室で待っていた森田さんは私が戻ると笑顔で迎えてくれた。
「大丈夫だったか? 検査の結果はどうだった?」
「ただの貧血よ。大丈夫。心配かけてごめんなさい」
森田さんにはこれ以上迷惑をかけられないからと心療内科の件は言わないことにした。
そして、近い内に理由をつけて早退させてもらった時に紹介された病院へ行けばいいのだから。
だけど、秘密と言うものは持てないようになっているようで、私の隠し事もものの数分で明らかにされた。
診察代は会社から出すと尊に言われ森田さんが立て替えることになっていた為、会計窓口へは森田さんが行き支払いをすることに。
支払いの時に医師からの紹介状を渡され森田さんは紹介状の宛名を見て顔色を変えた。
会社から一番近い総合病院の心療内科医師宛になっていた。
支払いを終えた森田さんは何も言わずに紹介状を私の前に差し出した。
私は森田さんに知られるのが怖く受けとる手が震えだした。
「バレると仕事に差し支えると思った?」
「はい」
「だから隠そうとした?」
言葉にならなく頷くのがやっとだった。
そんな私の顔を見て森田さんは肩を軽く叩いた。
「隠された方が困る。無理して仕事してまた倒れられてもいけないからな。上司として部下の許容範囲を超す仕事はさせられない」
「あの、契約は破棄には」
「君の仕事に文句つけるところはないよ。これからも頑張れるか?」
てっきり断られると思っていた仕事を継続出来ると分かると嬉しさで涙が溢れてきた。
すると、女性を泣かせてしまったとかなり困った顔をしてオロオロする森田さんは少し恥ずかしそうにしていた。