ただしいあなたのころしかた
石川くんはたまにあたしに触れる。
脈絡はないけど割と優しい手つきで。他の同年代の男子から肌で感じるような下心や邪心はまるで感じさせないけど、妙にエロくて心臓がきゅうとする。
「体に文字なんか彫るよりさ、」
石川くんは、すっとあたしと目を合わせると、わずかに口角を上げて意地が悪い顔で言葉を紡ぐ。
「もっと別の方法で夢中にさせてみたら?」
「……っ、」
石川くんの低い声があたしの耳にすうと入ってきて、痺れるようにヒリヒリして、体の芯がじんわりと熱くなった。
ゆっくりとあたしから目線をそらした石川くんは、最後にあたしの方をちらりと見てに満足そうに微笑むとまた本を開く。
「え、それは性的な意味で……!?」
「は? 何言ってんのキモ、死ねよ」
「急に辛辣!?」
そんな風に言われたら何も言えなくなる。
石川くんは、あたしなんかのことを絶対に好きにならないという割には、たまにこうやって思わせぶりな言動であたしをからかう。多分反応を見て面白がってる。
かーっと熱くなった頬を両手で覆いながら、石川くんをじっと見つめていた。
「……キュン死にしそう……」
「よし死ね」
「都合のいいとこだけ聞いてないで」
どうしようあたし。石川くんが好きすぎてつらい。