絶対、また彼を好きにはならない。
「よし、じゃあ」
「いただきます」
「いただきます」
子供みたいに声を揃えて、私たちは少し笑い合う。
拓未が作ってくれたシチューと、私が作ったサンドイッチがテーブルに並ぶ。シチューは1晩寝かせたことでさらに美味しくなっていた。
思わず笑顔になった私を見て、彼も満足そうに笑う。
相当お腹が空いていたであろう拓未はぺろっと食べ終え、私が一生懸命サンドイッチを頬張るのをにこにこ見ていた。
昨日と同じような、でも全く違う環境。
肌寒い空気と柔らかい日差し。
「…ねぇ」
拓未は深刻になりすぎず、それでもさらっと聞いてくれた。
「会社のこと、そろそろ話してくれてもいいんじゃないの?」
ちょっとだけ笑って、また複雑な表情で私を見ている。
やっぱり拓未は少し、由香里にも似ている。
「全部聞かせて?」
彼はまたくしゃっと笑って、そっと私の頭を撫でてくれた。
拓未になら、安心して話せる。
私は気づいたら、話したいことをすべてを彼に零していた。
***
私が全てを伝えると、彼はテーブルをまわってソファの前に座っている私のところにきて、自分はソファに座り、後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。
拓未のさらさらの髪から、私と同じシャンプーのにおいがする。
そういえば5年前も、彼はこうやって慰めてくれた。
「よく頑張ったね」
言葉だって、5年前と変わらない。
目の端っこに水滴が居場所を作る。
抱きしめた感触は強くなり、優しい指が涙をすくう。
「さやがさやなりに頑張ってきたことは、絶対消えないんだから」
拓未のひとつひとつの言葉が胸に落ちて、気持ちを楽にする。
「…負けちゃダメ」
言葉尻は子供のようで、でも私のことを知ってるあなたはむやみに励ましたりしない。
私は力強くうなずく。
「俺もできる限りのことするから」
あなたがそう言ってくれるだけで、私から怖いものはなくなっていく。
「もうさやが苦しんでるの、いやだよ」
そういって、拓未が体をさすってくれる。
いつの間にか涙は乾いていた。
「それに、」
彼はまたいたずらな笑顔で笑う。
「帰ってきたら俺が癒してあげるから」
私はホストじゃん、と笑い、拓未は俺とさやが再会したのだってキャバクラじゃん、と反撃した。
なんとなく、5年前の2人を思い出して、変わらないなぁ、とつぶやいた。
「なにが?」
「ううん、なんでもない」
拓未は抱きしめていた腕を離し、上に思いっきり伸びをして、そのままソファにうなだれた。
「ってーかさー その間宮ってやつ絶対さやのこと好きじゃん。」
「もう、バカなこと言わないで」
拓未の口から間宮さんのことを聞くのは、なんだか不思議な感じがする。
「ぜっっったいそうだよ」
拗ねるようにしてそっぽを向く。
なんだかかわいいなぁと思う。
「なんでそう思うの?」
私が振り返って聞くと、彼はさも当たり前のように、答えた。
「だって、そいつ、俺に似てるもん」
「…」
思いあたる節があって、なんとも言えず。
「それに、その…なんだっけ お前に優しくした覚えはない?みたいな。 そんなんも、違う意味があるの見え見えじゃん。」
「…へ?」
私が相当とぼけた顔をしていたのだろう。
彼はまた笑って、
「ほんとさやは鈍感だねー」
そういって頭をくしゃくしゃ撫でる。
「いただきます」
「いただきます」
子供みたいに声を揃えて、私たちは少し笑い合う。
拓未が作ってくれたシチューと、私が作ったサンドイッチがテーブルに並ぶ。シチューは1晩寝かせたことでさらに美味しくなっていた。
思わず笑顔になった私を見て、彼も満足そうに笑う。
相当お腹が空いていたであろう拓未はぺろっと食べ終え、私が一生懸命サンドイッチを頬張るのをにこにこ見ていた。
昨日と同じような、でも全く違う環境。
肌寒い空気と柔らかい日差し。
「…ねぇ」
拓未は深刻になりすぎず、それでもさらっと聞いてくれた。
「会社のこと、そろそろ話してくれてもいいんじゃないの?」
ちょっとだけ笑って、また複雑な表情で私を見ている。
やっぱり拓未は少し、由香里にも似ている。
「全部聞かせて?」
彼はまたくしゃっと笑って、そっと私の頭を撫でてくれた。
拓未になら、安心して話せる。
私は気づいたら、話したいことをすべてを彼に零していた。
***
私が全てを伝えると、彼はテーブルをまわってソファの前に座っている私のところにきて、自分はソファに座り、後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。
拓未のさらさらの髪から、私と同じシャンプーのにおいがする。
そういえば5年前も、彼はこうやって慰めてくれた。
「よく頑張ったね」
言葉だって、5年前と変わらない。
目の端っこに水滴が居場所を作る。
抱きしめた感触は強くなり、優しい指が涙をすくう。
「さやがさやなりに頑張ってきたことは、絶対消えないんだから」
拓未のひとつひとつの言葉が胸に落ちて、気持ちを楽にする。
「…負けちゃダメ」
言葉尻は子供のようで、でも私のことを知ってるあなたはむやみに励ましたりしない。
私は力強くうなずく。
「俺もできる限りのことするから」
あなたがそう言ってくれるだけで、私から怖いものはなくなっていく。
「もうさやが苦しんでるの、いやだよ」
そういって、拓未が体をさすってくれる。
いつの間にか涙は乾いていた。
「それに、」
彼はまたいたずらな笑顔で笑う。
「帰ってきたら俺が癒してあげるから」
私はホストじゃん、と笑い、拓未は俺とさやが再会したのだってキャバクラじゃん、と反撃した。
なんとなく、5年前の2人を思い出して、変わらないなぁ、とつぶやいた。
「なにが?」
「ううん、なんでもない」
拓未は抱きしめていた腕を離し、上に思いっきり伸びをして、そのままソファにうなだれた。
「ってーかさー その間宮ってやつ絶対さやのこと好きじゃん。」
「もう、バカなこと言わないで」
拓未の口から間宮さんのことを聞くのは、なんだか不思議な感じがする。
「ぜっっったいそうだよ」
拗ねるようにしてそっぽを向く。
なんだかかわいいなぁと思う。
「なんでそう思うの?」
私が振り返って聞くと、彼はさも当たり前のように、答えた。
「だって、そいつ、俺に似てるもん」
「…」
思いあたる節があって、なんとも言えず。
「それに、その…なんだっけ お前に優しくした覚えはない?みたいな。 そんなんも、違う意味があるの見え見えじゃん。」
「…へ?」
私が相当とぼけた顔をしていたのだろう。
彼はまた笑って、
「ほんとさやは鈍感だねー」
そういって頭をくしゃくしゃ撫でる。