美月~大切なあなたへ~
「お前は、しっかりしてんのか、ドジなのか分かんねぇな。」




職員室の前の廊下に積まれている、少し小さな、“1ー2・40名”と書いてある段ボールを開けながら、龍心先生が言った。





『わ、私ドジですか?』

「お~、すげぇドジだよ。お前、自分で分かってねぇのか?
おもしろいなぁ。」



龍心先生は笑顔だった。

私をドジと言うのが、それほど楽しいのだろうか……。





私がそんなことを考えていると、龍心先生が段ボールから、ビニール紐で巻かれた40冊のワークを出し終えていた。




「んじゃ、半分ずつな。
落とすなよ。しっかり持てぇ?」




ゔ…そうでもないけど、ちょっと重……


「大丈夫かぁ?
本当は俺が持ってっても良いんだけど、まだちょっと準備あるから…。
すぐ終わるから、お前らに追いつけたら持ってやるよ。」




準備?なんの準備だろ…?



まぁ良いや。早く持ってかないとキツい…。

私、非力だし。



「あ、日高。これも頼む。」




トサ…


私の持ってるワークの山の上に、龍心先生が何かを置いた。




“新しい数学・一年
教師用”


教師用教科書っすかぁ!?普通の教科書よりちょっと厚いし!!

プラスなんかノートっぽいのもあるし!!





「悪い。頼むな、日高。」

『はい。』


正直、辛いっす。



教室に向かう途中、

「美緒ちって、先生に好かれるタイプだねぇ。
日明先生も頼りにしてるし、今の龍心先生だって。」


て、みっちゃんが言った。


『違うでしょ。
日明先生は、私が初日に変なキャラ設定されちゃったから、面白がってるだけだよ。
龍心先生も、さっき私が職員室でボーッとしてたのが面白かっただけだよ。』



「そーかなぁ?」




あ…自分で言ってて涙が……。





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