ご褒美は唇にちょうだい
だから、私はこの気持ちを口に出さない。
これからもけして、言葉にはしないだろう。


「久さん」


「なんですか?」


「シャワー浴びてくる。眠るまでそばにいて」


私に言えるのは、こうした我儘だけ。
彼が仕事の範疇でできることだけ。

私がソファから立ち上がり寝室にを向かうのを久さんは見送る。


「いいですよ」


ソファがきしむ音。彼が座ったのだろう。
寝室で替えの下着や、ルームウェアを手にしながら、唇を噛みしめた。

苦しい。キスは甘かったけれど、胸には何か固い異物がつっかえているみたい。


ねえ、久さん。私はやっぱり恋愛対象外?

このままずっと、私はあなたの守るべき商品でしかない?



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