ご褒美は唇にちょうだい
操はその作品で日本演劇大賞新人賞を受賞し、いっそう活躍の場を広げることとなる。

その後、操とは演技の練習という名目で何度かキスを交わした。
それが一年も経つと、操のリラックスのためにもなった。

他者とのふれあいが圧倒的に少ない操は、キスによって心身ともに安定していた。
本人は誘ってこられないので、頃合いを見計らって俺が誘う。

そこまでがマネージャーの業務かと言えば疑わしい。
しかし、操を一流の女優に押し上げるためなら、痛くもかゆくもない策だった。

普段のマネージャーのキャラクターを脱ぎ捨て、傲慢な男として彼女の唇を求める。
自分の名前一本で勝負する操には、甘えられる腕が必要で、キスを交わせば彼女は束の間の安寧を手に入れられるようだった。

だから、そうしてきた。
四年以上もの間、操のキスの相手を務めてきた。

それだけなのだ。

だから、操の中で起こっている変化を、俺が注視してはいけないのだ。





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