君に向かって、僕は叫ぶ。

雨も止んできたころ、優雨は腕時計を見て言った。

「もう15時か...。ごめん、私そろそろ行かないと。時間つぶしに付き合ってくれてありがとう!」

「僕の方こそ!どうしてだか、優雨といると元気もらうよ。」

「私も思ってた!君といると、頑張ろうって思えるよ。じゃあ、私行くね!」

そう言って走っていく優雨の背中を見ながら思う。


君が流していた涙。

雨の中、独りで泣いていた君も、きっと辛い経験をしたんだろう。

君が僕の話を聞いてくれたおかげで、心が少し楽になった。

だから僕も、少しでいいから君の力になりたいってそう思う。


「優雨!!!」

そう思ったら、僕は気付けば優雨を引き留めていた。

こんな気持ちは初めてだった。


今日知り合った人なのに、"守ってあげたい"と思うなんて。

変かもしれない。

でもそれが僕の気持ちだから。

「優雨。僕は、君の力になりたい。

....君のことをもっと知りたい!

明日も、明後日も君と話したい....!

だから....また会ってくれる?」


恥ずかしくて顔を伏せたくなるのを我慢しながら、優雨の顔を見る。

「.......。」

優雨は目を大きく開いたあと、うつむいてしまった。


やっぱり変なこと言っちゃったかな...。

「ご、ごめん!!今のは----」

取り消そうと、"今のは忘れて"っとそう言おうとしたとき、優雨が顔を上げた。


「......!!!」


その優雨の表情を見た瞬間、僕は思った。


「また、会おうね。」


--そう言って笑った優雨の笑顔は、きっと誰にも出来ない。

これは優雨の、優雨だけのものだと。
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