君に向かって、僕は叫ぶ。
6:笑顔の裏に。

優雨と別れた後、しばらくすると僕を探す美咲の声が聞こえてきた。

「湊ぉーーーー!!!!!どこにいるのぉー!!!」

「あ.....しまった...。」

やばい、あの声だと.....すごく心配してる。

僕の中で、警報が鳴った。

僕が死のうとしてから、美咲は僕に対して敏感になってる。

ちょっとのことでも慌てたり、今みたいに心配したり。

でも、どれもこれも僕のせいだ。

たぶん美咲は思い出すんだろう。

屋上から飛び降りようとした僕の姿を....。

とにかく、早く出て行かなきゃ。

「美咲!!僕はここだよ!!!」

「湊!!どこ行ってるの!!心配するでしょ!バカ湊!!」

僕を見つけるなり、美咲は猛ダッシュで走ってきて怒った。

美咲に何回も謝ったあと、好きな缶ジュースをおごると、美咲はやっと許してくれた。



帰り道を歩きながら、美咲は僕を睨みつけながら言った。

「そもそも、何で公園なんて行くの?行くならメールぐらいしてよ。私がどれだけ探したと思ってるの?」

「ごめんね。しようと思ったんだけど、人と会って....。」

そこまで言うと、美咲は立ち止まって聞いてきた。

「会ったって誰と?」

僕も振り返って答える。

「女の子。僕と同じで暇つぶししてたみたい。」

美咲はなぜか不機嫌そうに聞いてくる。

「ど、どんな子よ?」

「え?どんなって言われても....。」

「な、名前は?どんな感じの子だったのよ?」

攻め寄って聞いてくる美咲に焦りながら答える。

「名前は、優雨っていうんだ。優雨はえっと、優しくて...あとは、笑顔がすごくきれい...かな?」

僕がそう答えると、美咲はなぜかさらに不機嫌になった。

「ふーん。で、湊は私が一生懸命探してる間、その可愛い子とおしゃべりしてたと?」

「え?い、いや...そういう訳じゃ....。で、でも、なんで怒ってるの...?」

「別に怒ってません!!」

いやいや、がっつり怒ってるし....。
でも、どうして急に...?

「え?ちょっと待ってよ!」

「湊なんか知りません!!」

そう言って、先にスタスタと歩いていく美咲の背中を追いかけながら思う。

女の子はよくわからないな...。



でも一つ分かることは、美咲は怒るとなぜか敬語になることだ。




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