君に向かって、僕は叫ぶ。
「ふぅー...。」

休憩に入ったのか、優雨は近くのベンチに腰かけた。

「優雨。こんなところにいた。」

そっと声をかけると、優雨は驚いたみたいで勢いよく振り向いた。

「な、なんでここが分かったのっ!?」

「お見舞いに来たら病室にいないんだもん。看護師さんに教えてもらった。」

僕がそう告げると、優雨は明らかに落ち込んだ様子だった。

「なに、知られたくなかったの?」

「だって、驚かそうと思ったんだよ?湊と美咲に。でも、その前にバレちゃうなんてー...」

「どうして、リハビリをしようと思ったの?」

僕の問いかけに、一呼吸おいてから優雨は答えた。

「足掻きたくなったからだよ。」

「....。」

力強い眼差しを僕に向けたまま、続ける。

「正直、"もう足は動かない"って言われた時は、もう無理なのかなって思ったよ。
でもね、私決めたの。本当に動けなくなるときまで、頑張ってみようって。
私は、足掻くのは得意だから。まだ、やり残したことがあるから。」

そんな強い決意を口にしながら、優雨は笑う。

そして、そんな彼女を強い人だと改めて僕は思った。



「私はそれでもまだ、ここにいたいから。」


力強い一歩を踏み出して、彼女はそう言って笑った。



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