Way to happiness
*6*
・・・もう朝だ・・・

横を見ると壱弥がこっちを向いてまだ寝ている

腕枕どころか、片手片足も紗都の上に乗せて

抱き枕状態…

私達…20年間、こうやって寝てたんだね

身動きとれないのに一番安心する・・・


若い時は離れたくなくて

このまま溶けて一つになれたらいいのに…なんて思ったっけ(笑)

気持ちが一つにならないと意味がないって気づいて
真剣に他の方法考えたりして・・・

若かったなぁ・・・


李都小都もいつかそんな気持ちになるのかな・・・

相手は壱弥みたいな人がいいなぁ・・・


「・・・あんまり見てると襲うぞ?」

はっと我にかえると、壱弥が片目を開けて笑ってる

「起きてたの?言ってよ~(笑)」

「いつものお返しにおはようのキスで起こしてくれるかなって期待してたんだけどな…」

「へ?いつものお返しって?」

「は?俺、毎朝お前起こす時、キスして起してるだろ?」

「えええええ!!!知らなかった!」

「嘘だろ?20年ずっと?」

「・・・うん」

「まじか・・・」

「ごめん…」

「明日からは起してからする…」

「う、うん・・・ねぇ、お腹空かない?朝ごはん作るよ?」


ベットから出ようとすると

「待ってろ。昨日、琥太郎から朝ごはん貰ってきたから」



ベットの横にワゴンをもってきて、その上に

プレートを乗せていく

スープまであるんだ・・・

ベットの端に二人並んで座ると

「「いただきます」」

「たまにはこういうのもいいね」

「ん~俺は紗都がご飯作ってるとこ見るの好きだけどな」

「私も壱弥が食べてるとこ見るの好き(笑)」

笑いあって食べる朝ごはんはおいしい・・・


「紗都・・・俺の紗都貯金の事なんだけど…」

「ん?」

「紗都の会社の所長さんと相談して来週から1週間、
有給貰ってるんだよ。
それと、来週は李都は研修で1週間、小都が部活で5日間、
紗都の実家から通うんだって。
・・・だから、俺達、旅行に行かない?
紗都が行きたがってた京都に3泊4日。
どう?」

「え?え?どれ一つ聞いてないんですけど…」

「これも計画のうちの1つだったからさ…」

「・・・京都に大阪もつけてくれるなら行く」

「言うと思った!もう予約済み!」

「仕事早いね(笑)もう…ずっとびっくりしっぱなしだよ」

「紗都…嬉しい?幸せ?」

「うん!すごく幸せだよ!!ありがとう!」

「よかった・・・」


「そうと決まれば色々準備…なんだろうけど、
今日は紗都が好きなことだけして過ごそう」

「私が好きなこと?」

「なんでもいいぞ?好きなこと…
好きな物だけ食べて好きな時間を過ごすんだ」

「贅沢だね(笑)でも…私の好きなことって…
なんだろう・・・」

「まず、昼御飯決めよう。出掛けるなら
準備しなきゃならないし、家で食べるなら
買い物しなきゃだし」

「昼御飯かぁ…」

思いつくのは壱弥のや李都小都の好きな物ばかり

・・・あ、お寿司・・・

壱弥と付き合いだした頃、壱弥がよく連れてってくれた
あのお寿司屋さん・・・

「ねぇ・・・あのお寿司屋さんは?昔よく行った…」

「寿司?・・・あぁ、宮さんとこ?」

「そう!宮さん!壱弥が昔よく連れてってくれた・・・」

「宮さんなら相変わらずだ。
この前も会ったから。じゃあ、昼御飯は宮さんだな。
それまで何する?買い物でも行く?」

「ん~晩ごはんの買い物は行かなきゃだけど~
マッタリしたいかなぁ…」

「そんなんでいいの?」

「うん。このまま映画とか見ようよ。」

再度ベットに横たわる紗都

壱弥が腕枕してまた抱き枕状態

録画してた映画やお笑い番組を
片っ端から見る二人

「なぁ…これじゃいつもの週末と変わんねぇじゃん。」

「これがいい。これが一番安心で癒されて幸せ。」

「そんなもんか?」

「そんなもんよ?」


映画もつまんなくなって

壱弥はスマホでゲーム、紗都は携帯小説

お互い逆向きで背中をぴったりつけて

各自好きな事へ没頭・・・


「あっ!そんなっ!あぁ…負けた…」
「残念でしたぁ…次頑張れ!(笑)」
「おう!」

「あぁ…そんな切ない話ってある?」
「人生全部うまくはいかねぇよ…また泣くのか?」
「だってせっかく・・・運命って・・・」

お互い何してるかわからないのに会話が成立する二人

「今日ぐらい泣くなよ…」
「だってぇ…だってぇ…」
「泣くなら読むなよ…顔洗って準備しろ。宮さん行くぞ。」
「うん・・・そうだね・・・準備する・・・」


準備しながら思う・・・


携帯小説の彼は大手の社長さんだから身分差で親の反対とか
大変な事もあるんだよねぇ・・・

頭っから敵視する人が大好きな人の親なんて
私なら辛すぎる・・・

壱弥のお父さんには呑み友達宣言されたし
壱弥のお母さんとはショッピング友達だし・・・

壱弥の親と私の親は孫の取り合い防止の為に
子供のスケジュールに合わせて「祖父母と孫の食事会」が
年に10回は開催されてる。
今回の李都小都のお泊まりの間も食事会は開催されるだろう。

小説の中の彼は多忙だと言いながら自分勝手にスケジュールを変更させて
彼女との時間を作るけど、私の壱弥はちゃんと段どりつけて
休みを作る。もちろん、そんな休みは全部私や子供達の為に使う。
その点は現実味もあるし、そういう壱弥が好きかな。


お金持ちの彼はなんでも買ってくれたり、いろんな所に連れてってくれるけど
壱弥は「紗都貯金」なんてしてくれてた・・・
嫌いな物を食べてくれたり、私の好きな物知っててくれたり
そっちの方が嬉しくない?




あぁ・・・私、携帯小説読みあさるのはきっと・・・
壱弥の方がいいって所を探してるんだ...



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