この恋、賞味期限切れ


正直、晴ちゃんを傷つけたことは許してないけど、恋すると盲目になってしまう気持ちは痛いくらいわかる。


だからいいの。いや、よくはないんだけど。

今は、これが、ちょうどいい気がして。



「女って怖……」

「舜ちゃんにはわかんないだろうけど、女にだって戦わなくちゃいけないときがあるんだよ! ね、晴ちゃん」

「! うん……!」

「ははっ、かっけぇな」



私の頭へと伸びる舜ちゃんの手。

ペシンッ、とその手を、南が叩き落とした。


横を見ると、ふくれっ面の南。


小さく一笑する晴ちゃんに、少し痩せた横顔が赤らんでいく。



「憧子、行くぞ」



これみよがしに名前を甘く呼んで、苦い表情で私の手をつかんだ。


南、今のって。

ねぇ。もしかして。



「嫉妬深い男はきらわれんぞ」

「うっせー」



そういうことだよね……?



「南!」

「……っ」

「南ってば!」

「……なんだよ」

「ヤキモチ? 本当に?」

「……だったら?」

「南、好き!」



なんでだろうね。
ちょこっと泣きそうになっちゃった。


南の手を握り返し、一緒に教室に入った。



「うん、俺も大好きだ」



みんなに聞こえるように告白され、赤色が見事に感染した。


冬なのに熱いよ。

これから始まるHRも集中できないね。


席は隣じゃなくても、まるで心はいつもそばにあるよう。


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