この恋、賞味期限切れ

切ない花火




ついに明日から夏休み。


夏休み前、最後の登校日は、こころなしか騒がしい。


つい先ほど終業式が終わり、教室に戻ると、LHRが始まった。

先生から生徒へ、通知表が手渡される。



ガタンッ、と椅子をずらした。

私が席に着いたタイミングに合わせ、南が席を立つ。


あの日――告白してから、南とは一言も話していない。


話したいし、話そうとした。

様子をうかがっては、見計らい、声をかけようとして言葉をなくす。

その繰り返し。


なんとなくお互いに微妙な距離を作ってしまっていた。


このまま夏休み入っちゃうのかな……。

しょんぼりしながらも、通知表を眺めた。



「……うん、まあ、こんなもんか」



南としりとりをしていた国語は、他の教科よりも少し成績がわるい。

しょうがないよね。
二学期がんばろう! うん、そうしよう!


数学は、一番評価が良かった。

それはたぶん南のおかげ。

南に教えてもらった問題が、テストに出たのだ。


未だにお礼を言えずじまい。


夏休みを憂鬱な気持ちで迎えることになるとは思いもしなかった。



「はーい、ちゅうもーく」



全員分の通知表を配り終えると、先生は教卓に四角い箱を用意した。



「今から席替えをするぞー!」



え……!? 席替え!?


隣に目をやると、南と視線がぶつかった。

すぐさま前に向き直す。


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