この恋、賞味期限切れ
「晴ちゃん、どこになった?」
「一番前だよ。しかも教卓の前……」
「うわっ、それは大変……。私は廊下側の一番うしろだよ」
「えぇ、またうしろ? いいなあ〜」
席を確認していると、ようやく南が立ち上がった。
どうやら南が最後らしい。
南はどこの席になるのかな。
「結人、どこだったー?」
「窓側の前から三番目」
「おっ! 俺と前後じゃん」
そんな会話を盗み聞き、ショックを受ける。
南は、窓側。
私は、廊下側。
けっこう離れちゃったなぁ……。
「憧子ちゃん? どうかしたの?」
「ううん! なんでもない」
隣同士じゃなくなっちゃう。
授業中に、ふたりきりの秘密を増やすことも、くだらないことを笑い合うこともない。
告白してから遠くなった距離を、なおさら近づけられなくなる。
「全員、くじ引いたかー? それじゃあ席移動しろ~」
暑さにやられたような気だるげな指示を、聞くに聞けずにいる。
大切で、特別な、特等席。
手放したら、後悔のまま終わってしまう。
クラスメイトはもう席を移動し始めている。
私も早く移動しなくちゃ。
なのに。
だけど。