月夜の葉桜
新月
見た目は悪くないと思う。
いや、正直に言うよ。中の上だと思っているよ。

いったい世の女性たち何人が、自分のヒエラルキーは中の上と順位付けするのだろう。
予想しているよりも多いんじゃないだろうか?
少なくとも私は自分をその位置に順位付けし、口先では「中の下です」なんて言いながら、そんな訳ないだろう見れば分かるだろと思っている。


新宿東口から徒歩1分、おしゃれな有名ブランドが一階に構えるこのビルに入る、熱帯魚が目の前で泳ぐ これまたおしゃれなダイニングバー…の、1つ上の階にある大衆居酒屋で口先だけの言葉と笑顔を振りまいている。


ああ、さっきエレベーターが止まった時にチラッと見えた熱帯魚綺麗だったな。

そんなことを思いながら、呼び鈴を鳴らす。
微かなピンポンという音から数秒遅れて「お待たせしました」と襖が開く。

「わたし日本酒頼みますけど、おかわり頼む人いますか?」
ビール、ウーロンハイなど数種類の注文を店員が聴き終え襖を閉める。


口先だけの会話と他人行儀な注文の確認、こんなことをしながらヒエラルキーについて考えている私は3対3の合コンの真っ最中だ。

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