抜き差しならない社長の事情 【完】


「え? 蒼太 なに?
 どうかしたの?」

「さぁ? 紫月さんに急ぐ用事でもあるんじゃないですか?」
とニッコリと微笑んだ曄は、

クルッと神田に向き直り

「専務、

 もしかして専務って、ものすごーーく鈍感?」

と怪しむように目を細めて神田を睨んだ。



「な…… なに」

「私が専務にあげたチョコレート、
あれって手作りの特別バージョンだってわかってます?」

「え?」


「――やっぱり……

 もう知らない」


「! ――ちょ、ちょっと曄ちゃん?
いや、蒼太と同じものじゃないの?
 いや蒼太の次と言うべきか……」


「社長には市販のです!」

「え? あ、そう?

 え? だって曄ちゃん、蒼太のこと」 



クルッと振り返り、キッと神田を睨んだ曄は、

「もう百回くらい言ってますよね、
私は社長を尊敬していますけど、それだけですって!

専務なんか知らないっ!」


曄はプリプリと頬を膨らませて自分の席につくと、

ツンと済ましてパソコンに向かった。
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