海月物語。
「私、彼の両親の反対を押し切って二人でアパートに出たから嫌われてて。彼の死を両親が知ったら、すぐ私を追い返すし、アパートも引き払われて。荷物もどこかに‥消えちゃって。多分捨てられたと思うんですけど‥‥‥。」
「それで水族館に来てたの?」
海斗の問いかけに、来海は頷いた。
「あそこのクラゲ、彼と一緒に見て‥。」
来海が立っていた水族館のクラゲの前は、亡くなった来海の彼、一馬と何回もキスをし、結婚しようって誓った思い出の場所だったのである。最後まで説明しようと思ったが来海の喉仏がきゅっと閉まって苦しくなった。苦しくて、言うことができなかった。
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