冷酷上司の甘いささやき
「阿部さん、月曜は来るって」

「そ、そうですか! 良かったです!」


……阿部さんが月曜日に来てくれるのは良かったけど。



さっき、課長が阿部さんに見せていたやさしい笑顔が頭から離れない。




だって、課長のあんな顔、私だって見たことない。



それを、なんで阿部さんに見せてたの……?




阿部さんも、課長のその顔を見て、顔を赤らめていた。
そりゃ、いつもクールな課長が自分だけにあんなにやさしく笑ってくれたら、赤くならない女の子はいないと思う……。
阿部さんが月曜日は会社に来るって言ったのは、課長がやさしく笑ってくれたからだよね……。



なんか、すごくモヤモヤする。さっきまであんなに楽しかったのに、心の中に黒い塊みたいなのが渦巻いてるような……そんな感じがする。




その後、広い公園の中を一時間くらいかけてじっくりと桜を見ながら歩いて回って、時刻はちょうどお昼時だった。



「戸田さんなに食べたい? ここ来る途中で結構いろいろ店あったよな」

「はい。あ、すみません。私、お弁当とか作ってくるべきでしたよね……?」

「え? いや、いいよ。そこまでさせようとか思ってないし。戸田さん、料理できなそうだし」

「ちょっ、そ、それは誤解ですよ! たしかに普段はしないですけど……それはひとり暮らしだからしてないだけであって、実家にいると結構母の手伝いとかしていたので、料理はできます!」
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