私の彼、後ろの彼。


「璃子、おはよう」

 肩をポンと叩かれて前を見ると、美香(ミカ)がニコニコしながら立っていた。

 いつもと変わらない、はち切れんばかりの笑顔だった。

 この眩しさが太陽の光なのか、美香の笑顔なのかは分からないが、耐えきれずに私は額に手をかざし、目映い光を遮った。

 こうしてなんとか、美香の顔を見ることができた。

「おはよう、美香」

 私は美香ほど笑顔になれなかった。

 下がった眉毛がより一層下がっていると、自分でも分かった。

「璃子、どうしたの。何かあった?」

 私の変化に美香は気づいていた。

「美香は何でも分かるのね」

「保育園からの幼馴染だもん。分かるに決まってるじゃない」

 美香は頬を膨らませ、両手を腰に当て「もう」とため息をついた。

 私と美香は正反対の性格だったが、どこか似ているところがあった。

 家は歩いて5分程度のところで取り分け隣近所という程近くはなかったし、両親が昔からの知り合いという訳でもなかったが、なぜだか気があった。

 幼稚園の頃からの仲というだけあって、何でも話せる姉妹のように仲が良かった。

 だが、私にはたった一つ美香に言えないことがあった。

 それは…。

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