Live as if you will die tomorrow
「………」
自分の車が停めてある前まで来て、振り返る。
そこに、いつかみたいに、赤い髪の男は立ってなくて、ほっとしたような、拍子抜けしたような、居心地の悪い感情を持て余す。
崇は、どうやら俺が、空生を手放すと思っているらしい。
「諦めないよ、俺は。」
車に乗り込んで、呟く。
そう声に出せば、不思議と火の燃え始めのようなチリチリが、和らぐような気がした。
エアコンの風が、まだ暖まらない内に、俺は車を発進させ、五月蝿い妹のいる場所へ戻る決心を固めた。
駐車場を出る際、マンションの前にチラ、と目をやるが、ハーレーはもう見えなかった。
そして、ふと思う。
崇が髪を、赤く染めなくなったのは、いつからだったか、と。
そうしていたワケも、そうしなくなった理由も、俺は知らない。
月曜に顔を出さない意味も。
もう、何年もずっと居るのに、そういえば、俺は崇のことを何も知らない。
崇は、職業柄、俺の事を知っているようだけど。
俺は崇を知ろうともしなかった。
「…ま、どーでもいいか。」
そう言って、アクセルを踏む。
知った所で、きっとどうってことはない。
俺には無関係の話なんだ。
ルナは、来る者の過去を選ばない。
だって、過去は。
どう足掻いたって、そこに居座って動かないんだから。
でも、空生だけは。
ルナに引きずり込んだ初めての人間だ。
どんな手を使ってでも、欲しかったんだ。
その理由が。
俺にはまだわからない。