意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)

営業事業部の課長である藤沢は、私が長期で有休を取りたいと相談すると、一瞬息を呑んだが、すぐに訳あり顔で頷いた。

「了解。今まで仕事ばかりしていたんだから、少しは休んだ方がいいだろう。有休消化してこいよ」

 と言って、私がお願いした日数より多く、藤沢は有休申請を出してしまったのだ。

 少しだけ有休を取ることに躊躇していたのだが、こうなってしまった以上、ますます後に引けなくなってきた。
 誰もがこの有休を使ってNYの木島に会いに行くのだろうと思っているはずだ。

 なんとなくそれが恥ずかしくて「やっぱりやめようかな」と躊躇しだしたときに、専務から呼び出しがあったのだ。

「はい、これ。お詫びの印」
「……お詫びはすでに慰労会を開いていただきましたが」

 かなり散財したと思う。なんせあの人数、そして飲めや歌えやの大騒ぎだった。
 これでチャラということで終わらせたはずだが……。

 手渡されたのは航空チケット。それも明日便である。行き先はNY。

 なんだか皆に私の行動が読まれているようで居たたまれなくなる。
 チケットを突き返そうとしたのだが、それを拒まれ、また別の茶封筒を渡された。

「……これは?」
「菊池君、悪いね。有休を使いバカンスに出かけるというのに仕事を押しつけて」
「……」
「これ、NY支社にいる海外事業部課長の木島君に渡しに行ってもらえないだろうか」

 行ってくれますよね、仕事だからね。と意味ありげにほほ笑まれてしまえば、受け取るしかなかった。

 そんなこんなで、周りの温かい支援(?)もあり、私は機上の人となった。

 向かう先は……もちろんあの男の元だ。
 悔しいけど、悔しいけど……会いたい。それが理由だ。

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