ナイショの恋人は副社長!?
「仕事なら、心配しなくても辞意があることを伝えておいた」
一瞬、道場が水を打ったようになり、静まり返る。
それから数秒後。優子が震える声を出した。
「なっ……なんでそんなことまで勝手に……! 私は今、あの仕事が好きで」
「好きなのは、早乙女副社長じゃなくてか?」
さらに言われたことが、敦志のことで、さすがの優子も目を剥いたまま固まってしまった。
親に自分の好きな人が知られてしまっていることの恥ずかしさよりも、敦志になにか変なことを言ったりしたんじゃないかと動揺する。
目を揺るがせながら、優子は小さく口にした。
「……ど、どうして副社長のことまで」
「彼とはあまりに立場が違いすぎると、自分でも思っているんだろう?」
そのひと言は、ここ最近、自分で言い聞かせてきた言葉。
痛いほど、何度も何度も――。
「……それは、わかってる」
「夜分に失礼いたします」
優子が苦渋を滲ませた顔で漏らした時に、道場の入り口から声がする。
(この声……まさか)
全員一斉に声のした方に顔を向けると、そこには敦志の姿があった。
幻覚でも見ているんじゃないかと優子が意識を奪われているところに、今度はドイツ語が飛んでくる。
「Yuko. Ich war sicher!(ユウコ、無事だったんだね)」
「ヴォ、ヴォルフさんまで!」
続いて敦志の後ろからヴォルフまで現れ、優子は瞬きも忘れてしまう。
「へぇ。ドウジョー? 趣があっていいね。……ああ。あの男だ。ホテルからユウコの周りをウロウロしてたヤツは」
ヴォルフは興味津々といった様子で一歩道場に踏み込む。
天井を見上げ、くるりと見回し、視線の行き着いた先に柾利を見つけると、目を細めてそう言った。
今度は敦志が一歩前に出てきて、美しく一礼をする。
そして、頭を上げて武徳を真っ直ぐ見据えた。
一瞬、道場が水を打ったようになり、静まり返る。
それから数秒後。優子が震える声を出した。
「なっ……なんでそんなことまで勝手に……! 私は今、あの仕事が好きで」
「好きなのは、早乙女副社長じゃなくてか?」
さらに言われたことが、敦志のことで、さすがの優子も目を剥いたまま固まってしまった。
親に自分の好きな人が知られてしまっていることの恥ずかしさよりも、敦志になにか変なことを言ったりしたんじゃないかと動揺する。
目を揺るがせながら、優子は小さく口にした。
「……ど、どうして副社長のことまで」
「彼とはあまりに立場が違いすぎると、自分でも思っているんだろう?」
そのひと言は、ここ最近、自分で言い聞かせてきた言葉。
痛いほど、何度も何度も――。
「……それは、わかってる」
「夜分に失礼いたします」
優子が苦渋を滲ませた顔で漏らした時に、道場の入り口から声がする。
(この声……まさか)
全員一斉に声のした方に顔を向けると、そこには敦志の姿があった。
幻覚でも見ているんじゃないかと優子が意識を奪われているところに、今度はドイツ語が飛んでくる。
「Yuko. Ich war sicher!(ユウコ、無事だったんだね)」
「ヴォ、ヴォルフさんまで!」
続いて敦志の後ろからヴォルフまで現れ、優子は瞬きも忘れてしまう。
「へぇ。ドウジョー? 趣があっていいね。……ああ。あの男だ。ホテルからユウコの周りをウロウロしてたヤツは」
ヴォルフは興味津々といった様子で一歩道場に踏み込む。
天井を見上げ、くるりと見回し、視線の行き着いた先に柾利を見つけると、目を細めてそう言った。
今度は敦志が一歩前に出てきて、美しく一礼をする。
そして、頭を上げて武徳を真っ直ぐ見据えた。