ナイショの恋人は副社長!?
信じられない、という驚きは、ただ助けてもらったからとか、強引に上着を渡されたからではない。
数分前に声を掛けてきた彼を、優子は密かに慕っていたからだ。
「今の、本物の副社長だった、よね……?」
その衝撃な出来事は、思わず声に出してしまうほどのことだった。
受付に立つ優子は、ごくたまに副社長である〝早乙女敦志(さおとめあつし)〟を見かける。
それは、取引先へ向かう際や、来客を迎え入れる時くらいで、直接会話をしたことはなかった。
それでも、優子の目は、無意識に彼に留まってしまう。
敦志が纏う凛とした空気が好きで、姿を見つけては遠くから視線を送っていた。
(言葉遣いも丁寧だし……。想像以上に、いい人だった)
先程、初めて言葉を交わしたが、それがまた好印象。
優子は、敦志の高級そうな上着を両手で持ち、そっと胸に押し当てた。
今回のことで、彼が優しい人柄なのだということが認識できた。
けれど、同時にそのやさしさは〝不特定多数〟に対するものなのだということも。
(だって、私のことなんか、知るはずもないだろうし)
しかも、そこは社内ではなく、道端での出来事。
つまり、社内外問わず、他人へ気配りをしてるということだと優子は考える。
それでも、小さな頃から『王子様(ヒーロー)なんかいない』と思っていた優子の心に、ほんの僅かに歪(ゆがみ)が生じる。
現実にはあり得ないのだと思っていたことが、今、夢ではなく本当に起きた。
まして、その相手が、自分の意中の男ならば、当然気持ちは揺らぐだろう。
高鳴る胸を、上着を持つ手で押さえる。
ゆっくりと息を吸い込み、深く吐き出した。
「平常心」
ぽつりと零し、顔を上げた時には、すでに動揺など微塵も見えない顔つきに変わる。
ダークグレーの上着をなるべく皺にならぬよう気をつけながら、敦志の助けに感謝しながら会社を目指した。
数分前に声を掛けてきた彼を、優子は密かに慕っていたからだ。
「今の、本物の副社長だった、よね……?」
その衝撃な出来事は、思わず声に出してしまうほどのことだった。
受付に立つ優子は、ごくたまに副社長である〝早乙女敦志(さおとめあつし)〟を見かける。
それは、取引先へ向かう際や、来客を迎え入れる時くらいで、直接会話をしたことはなかった。
それでも、優子の目は、無意識に彼に留まってしまう。
敦志が纏う凛とした空気が好きで、姿を見つけては遠くから視線を送っていた。
(言葉遣いも丁寧だし……。想像以上に、いい人だった)
先程、初めて言葉を交わしたが、それがまた好印象。
優子は、敦志の高級そうな上着を両手で持ち、そっと胸に押し当てた。
今回のことで、彼が優しい人柄なのだということが認識できた。
けれど、同時にそのやさしさは〝不特定多数〟に対するものなのだということも。
(だって、私のことなんか、知るはずもないだろうし)
しかも、そこは社内ではなく、道端での出来事。
つまり、社内外問わず、他人へ気配りをしてるということだと優子は考える。
それでも、小さな頃から『王子様(ヒーロー)なんかいない』と思っていた優子の心に、ほんの僅かに歪(ゆがみ)が生じる。
現実にはあり得ないのだと思っていたことが、今、夢ではなく本当に起きた。
まして、その相手が、自分の意中の男ならば、当然気持ちは揺らぐだろう。
高鳴る胸を、上着を持つ手で押さえる。
ゆっくりと息を吸い込み、深く吐き出した。
「平常心」
ぽつりと零し、顔を上げた時には、すでに動揺など微塵も見えない顔つきに変わる。
ダークグレーの上着をなるべく皺にならぬよう気をつけながら、敦志の助けに感謝しながら会社を目指した。