ナイショの恋人は副社長!?

「ナイト気取りかな? でも、誤解しないで欲しいな。僕も、彼女を守った側なんだから」
 
ヴォルフの言うことは事実だ。
自信のあるヴォルフは、揺るぎない瞳で敦志を見ると、今度は苦笑いを浮かべる。

「社員の教育がなってないんじゃないかな? 多勢に無勢とは、見ていて面白いものではない」
 
半ば馬鹿にしたようなヴォルフの態度よりも、敦志はその内容の方が気になった。
敦志は目を大きくし、左隣にいる優子を見る。

「え……。鬼崎さん、なにか……あ!」
 
優子のネームプレートが目に入った敦志が、何かに気が付いたように声を上げる。
先程の女子社員の会話を思い出し、敦志の中ですべてが繋がった。
 
名前に関わる発言をしていた女子社員。
そして、おそらくその場に遭遇したのであろうヴォルフに焦燥する。
 
すぅっと息を吸い、ひとたび目を閉じた。再び瞼を押し上げた敦志は、眼光人を射る。

「とりあえず、後はこちらで処理しますので。わざわざ、ありがとうございました。ヴォルフさん」
 
確かに笑顔であるはずなのに、優子から見てもその敦志の顔は明らかにいつもとは違う。
その横顔を茫然として見上げていると、正面に立つヴォルフが目を伏せ、小さく笑った。

「何か勘違いしてるんじゃないかな? 僕は今日、ユウコに会いに来たんだけど」
 
そうして青い瞳を長い睫毛で半分隠し、ヴォルフは熱い視線を優子に向ける。
それは初耳という優子も、敦志同様言葉を失った。
 
呆気に取られて立ち尽くすふたりを前に、ヴォルフはひとり、和やかに話を進める。

< 50 / 140 >

この作品をシェア

pagetop