My Fair Farewell
困ったような笑み。
わたしに気を遣わせないように笑ってみるけれど、あまりうまく笑えていない、そんな表情。
わたしはきっと、これから先も裕のこの表情を、何度も思い出すんだろう。
優しくて不器用なこのひとを、わたしはきっと、これから先も何度も思い出すんだろう。
そういえば、裕と別れたことを母さんに話したとき。
懐かしそうに目を細めて、母さんが言ったっけ。
振られて傷ついたことよりも、振って傷つけたことのほうが、いつまで経っても覚えてるものだよ。
そうだったらいい。
わたしだけがずっと、傷つけたことを思い出せばいい。
裕は忘れてくれたらいい。
わたしに傷つけられたことなんて、過去にしてくれたらいい。