My Fair Farewell




困ったような笑み。



わたしに気を遣わせないように笑ってみるけれど、あまりうまく笑えていない、そんな表情。



わたしはきっと、これから先も裕のこの表情を、何度も思い出すんだろう。


優しくて不器用なこのひとを、わたしはきっと、これから先も何度も思い出すんだろう。




そういえば、裕と別れたことを母さんに話したとき。


懐かしそうに目を細めて、母さんが言ったっけ。




振られて傷ついたことよりも、振って傷つけたことのほうが、いつまで経っても覚えてるものだよ。




そうだったらいい。


わたしだけがずっと、傷つけたことを思い出せばいい。


裕は忘れてくれたらいい。




わたしに傷つけられたことなんて、過去にしてくれたらいい。




< 20 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop