過保護な彼に愛されすぎてます。


「とってないよ。だって、むやみに他の子傷つけると奈央ちゃん怒って口聞いてくれなくなるし。
それに、モデル始めてから、そういうのは気を付けるようになったから平気。人気商売だってことは俺だってわかってるし」

まぁ、それもそうか、と思いながら聞いていると「相手から咬みついてきたら話も別だけどね」と付け足され、やれやれと思う。

でも、私だって喧嘩を売られたら買うし、高校のときだって、郁巳くんが現れなかったら言い返してたから、注意はしないことにする。

気が強いのも、雑誌の写真から伝わってくる郁巳くんの魅力に繋がっているような気もするし。

「世渡り上手だもんね」
「まぁね。上手くパターンを使い分ければいいんだって気付いてからは、かなり楽」

そう笑う郁巳くんをじっと見て「ねぇ、郁巳くん」と呼ぶ。

「郁巳くんは、まだ人が怖い? 郁巳くんの外見だけを見て近づいてきてる人しか、周りにいないって思ってる?」

『そのうち、郁巳くんの外側だけじゃなくて、中まで見て好きになってくれる人が現れて、そしたら郁巳くんも寂しくなくなるよ』

いつか言った言葉を思い出しながら聞くと、郁巳くんは真顔のまま少し黙った。
それから、ゆっくりと微笑む。

「いないかな。いないし……いらないとも思ってる」
「……そう」

寂しそうな瞳に相槌を打つと、郁巳くんが言う。

「だから、俺は一生、奈央ちゃんだけでいいよ」

『じゃあ、それまで奈央ちゃん、傍にいてくれる?』
十年近く前にした約束が、重なって聞こえた気がした。


郁巳くんと私は、言うなれば幼なじみだ。

だけど、そこにはたぶん、依存だとか、そういう要素も加わってしまっていて……歪んでる。



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