過保護な彼に愛されすぎてます。


「やっぱり奈央ちゃんには、白が似合うと思うんだよね。赤が似合わないわけじゃないけど……ちょっと〝この赤〟は下品すぎるから」

そう言い、手元に残った赤いシュシュを蔑むような眼差しで見つめた郁巳くんが、おもむろに鏡の中の私と視線を合わせる。

そして、「捨ててもいいよね?」と目を細めた。

その発言に、慌てて振り向いて、鏡越しじゃなく視線を合わせる。

郁巳くんの表情に、険しさだとか怒りはない。
でも……感情の浮かんでいない瞳が、怖いと感じた。

「捨てるって……ダメだよ。真美ちゃんからもらったものだから」

緊張しながらも言うと、郁巳くんの目がじっと私を見つめた。
その瞳に、〝あ〟と思う。

最近、おかしいと感じたとき、郁巳くんがいつもしていた目だって気付いて……咄嗟に、目を伏せた。

機嫌を損ねちゃダメだって、本能的が警告音を鳴らす。

「友達からもらったものを、捨てるなんてできない。でも……郁巳くんが嫌だって言うなら、使わないでしまっておくから。それならいいでしょ……?」

うかがうような口調で言うと、郁巳くんは少し考えたあと「んー……」と迷うような声を出す。
その声にまだ不機嫌さが含まれているのを感じて、続けた。

「赤い小物とか、普段だったら選ばないけど、もらってみて、たまにはいいのかもって思ったの。
だから、違う赤いシュシュ、今度郁巳くんが一緒に選んで」

目を合わせた私に、郁巳くんはキョトンとしたあと、ふわっと柔らかく表情をほころばす。

それを見て、こっそり胸を撫で下ろした。
瞳に、感情が戻ってる。


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