君を愛さずには いられない
パレット・ルビ・カンパニーは都内某所のビル内にあった。

「皆、今日から仲間になる佐竹仁くんです。群を行くイケメンですよ。」

朝礼で俺を紹介した中野はパレットの総括的立場だ。

彼の爽やかな雰囲気は俺には馴染みのないものだった。

俺は愛用の黒縁メガネをコンタクトに替えていた。

新人らしく無難に挨拶をした。

「よろしくお願いします。」

俺の固い表情と暗い面差しを見ても

パレットの連中は明らかにラテン系な反応だった。

「うぃーっす!」

「よろしくぅ!」

「頑張れよ!」

「飲み会やろうぜ!」

「皆、静かに。」

中野が爽やかに制した。

「佐竹くん、誰にでも気楽に何でも聞いてくれて構いませんのでこちらこそよろしくお願いいたします。」

俺はオフィス内をザッと見回したが女性社員が一人も見当たらなかった。

それを見ていた中野が言った。

「佐竹くん、残念なことにウチには女子がいないんです。男ばかりで申し訳ありません。」

「いや、特に困らないので。」

俺は適当に言っておいた。

女は匂いだけで吐けると

本当はそう言いたかったが。

視界の範囲内に女がいなくてホッとしたのは事実だ。

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