君を愛さずには いられない
局長からメールが来た。

「入院中」としか書かれていなかった。

俺は中野に電話した。

「はい。」

「佐竹です。」

「どうされましたか?」

中野の第一声は爽やか過ぎた。

「局長が入院中とはどういうことですか?」

俺は挨拶抜きで聞いた。

「倒られまして目下検査中です。」

「そうですか。」

「お疲れのご様子でした。」

「パリの件で?」

「お分かりでしたら私からは何も申し上げることはありません。」

「中野さんはどう思われますか?」

「何をですか?」

「局長が無理を承知でされていることに関してです。」

「私は彼を崇拝していますので彼のお役に立ちたいだけです。切りますよ。」

「ありがとうございます。」

中野はサッサと電話を切った。

俺は与えられた目の前の案件をやり遂げるしかない。

局長が俺に何をさせたがっているかは

渡米前にわかっていたからだ。

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