君を愛さずには いられない
河村はパリ行きに嬉々揚々としていた。

まったく腹立つ。

俺たちが2年間住んだこの部屋ともおさらばだ。

「河村、準備はいいのか?」

「グランマへのお土産ならバッチリです。」

「やれやれ。」

俺は彼女の余裕に首を振った。

「佐竹さん、パリでの生活はやっぱりマンションですか?」

「ああ。」

「1年間ですものね。」

「1年じゃ不服か?」

「いいえ。東京に戻ったら席はパレットですよね?」

「未定だ。」

「どうしてですか?」

「どうしてもだ。」

「私はパレットに戻りたいです。」

彼女の言葉は俺の願望そのものだった。

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