君を愛さずには いられない
ベッドの脇に突っ立ち

腰に両手を当てて不機嫌全開な彼女は

俺に指を差して怒りを含んだように言い捨てた。

「もういい。そんなにパリが嫌ならとっと日本に帰ってよ。」

「志穂。」

「何?」

「帰国したら本社勤務だ。」

「パレットじゃないの?」

「推進室だ。」

「ちくしょう。」

「言ったな。」

「そうじゃなくて。」

「じゃ、何だ?」

「私はパレットのオフィスが好きなの。」

「それは俺もわかる。」

「パレットじゃないなら辞めたい。」

「本気か?」

「ごめんなさい。役に立てなくて。」

「いや、謝らなくていい。」

「仁は?」

「局長が離さないと思う。」

「そっか。」

「辞めてどうするんだ?」

「まだ決めてない。考えたいの。」

「わかった。」

「仁。」

「何だ?」

「私を慰めてよ。」

「どうやって?」

彼女はベッドを指差した。

「わかった。」

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