◆Woman blues◆
スマホを見ながら急に方向変換して歩き出したため、私は真後ろにいた人にぶつかってしまったのだ。

たとえ相手が男性でビクともせず、自分が後ろに吹っ飛んだとしても、私に非があるのには代わりない。

「あの、お怪我はないですか」

そう言った私を見て、男性は息を飲んだ。

「あなたの方が……あの、鼻血が」

「えっ?!嘘っ!」

サアッと血の気が引いた。

いや、血の気が引くというか出ちゃってるらしいけど。

反射的に鼻に手をやると、指にベッタリと血がついた。

嘘でしょ、やだっ……!

鼻血なんか、幼稚園の時以来出てない。

やだやだ、どうすりゃいいの、分かんない。

通りすがりの人々はジロジロ見てくるし、ぶつかった時に吹っ飛んだカバンとスマホが……。

公衆の面前で独身アラフォー女が、鼻血!!

しかも予期せぬ鼻血に、応急処置が思い浮かばない。

は、は、鼻をつまむ……どのへんをー!?

頭が真っ白になって分からなくて、ただただ掌で顔を隠した。

その時、

「おいで」

ぶつかった男性が、私を引き寄せた。

「これで、押さえてて」

そう言って彼は、濃い色のハンカチを私に手渡した。
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