◆Woman blues◆

可愛い人

◆◆◆◆◆◆◆

「太一、見て見て!」

幼馴染みのリアナが、スマホの画面を俺に見せながらニコニコと笑った。

場所は俺の叔母で、株式会社A&Eの社長でもある塩見涼子の自宅だ。

親族が集まって叔母の誕生日を祝う中、今年は特別にリアナがこの誕生日会にやって来た。

理由は、五歳違えど俺の幼馴染みであることと、彼女が大手アパレル会社SLCFの社長令嬢である事が最大の理由だった。

当初、叔母の会社である株式会社A&EとSLCFとは取引がなかったが、去年SLCFが打ち出したコラボ企画のジュエリー部門を、叔母の会社が見事勝ち取ったのだ。

「SLCFの、『ファッションとジュエリーのセット通販』に叔母さんの会社が選ばれるなんて凄いですね」

SLCFの通販雑誌をめくりながら俺がそう言うと、ソファでワインを傾けていた叔母がニッコリと笑った。

「わが社のジュエリーデザイナーのセンスはピカイチよ。中でもデザイン一課にいるのよ、凄腕がね」

その一言で一気に興味が湧いた。

叔母である塩見涼子は苦労人だ。

若くして海外を渡り歩き、ジュエリーデザイナーとしての腕を磨き、帰国した後、株式会社A&Eを立ち上げ一代でここまで大きくした。

家庭を持たず、会社に身を捧げた彼女が認めたデザイナーとは一体どんな人物なのか。

「どんな人です?」

俺の問いに叔母はニヤリと笑った。

こういう笑い方を、彼女はしょっちゅうする。
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