◆Woman blues◆
痴女……痴女だとか、思われちゃったんじゃないだろうか。

ヤバイ。

私は焦って彼の上から飛び退くと、あたりを見回しベッドにかけてあったカバンを引き寄せた。

それから名刺を取り出し彼に差し出すと、深々と頭を下げた。

「これ、私の連絡先です。本当にすみませんでした。あの、もしも服やお布団を汚していたら全部弁償いたします。それと、後日改めてお礼に伺ってもよろしいでしょうか?」

マシンガンのように捲し立てたのが余裕のなさを物語っていて、恥ずかしくて恥ずかしくて、私は顔を上げることが出来なかった。

「じゃあ……頂きます」

立ち上がって彼はそう言うと、私の手から両手で名刺を受け取って、じっと見つめた。

「夢輝、僕の名刺も受け取って」

彼はそう言うと、私に自分の名刺を差し出した。

オズオズとそれを受け取り、眼を通した私は思わず息を飲んだ。

だって、株式会社A&Eと書いてあったから。

「デサイン一課……鮎川太一……」

何の冗談だ。

わが社には、デザイン課が一課から三課まである。

そして私はデザイン一課だ。

「嘘でしょ?」

私は僅かに首を振りながら彼……鮎川太一を見上げた。

「来月から株式会社A&Eに入社するんだ。ヘッドハンティングされちゃって」

またしてもクラリと目眩がした。

「おっと夢輝、大丈夫?」
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