◆Woman blues◆
「来月からって、後数日で来月ですけど」

私が呆然としながらもなんとかそう言うと、鮎川太一はニッコリと微笑んだ。

「鮎川太一と申します。柴崎夢輝チームリーダー、どうぞよろしくお願いします」

こんなこと、ある?!

課長からは何も知らされていないのに。

いや。

課長は正直言ってどん臭い。

これくらい、あり得る。

けど、これごときでギャーギャー言っていいのは二十代までだ。

独身アラフォー女がガタガタいっちゃカッコ悪い。

私は咳払いすると身を正し、鮎川太一を見上げて微笑んだ。

「こちらこそ、ご一緒に働けるのが凄く楽しみです。どうぞよろしくお願いします」

すると、鮎川太一がクスリと笑った。

「あー、こんな可愛い人と働けるなんて、幸せ」

やだ、からかわれてる。

独身アラフォーで、鼻血出して気絶する女が可愛いわけがない。

早く立ち去りたかった。

「……じゃあ、私はそろそろ失礼します。また後日伺います」

私はそう言って立ち上がり、玄関へと向かった。

歩を進めながら、首をかしげる。

あれ?!

心臓がドキッと脈打つ。

こ、この間取りは……。
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