◆Woman blues◆
たちまちのうちに鼻の奥がツーンと痛み、涙が湧き上がった。

……彼はきっと待ってくれていたのだ、私を。

あの時の、太一の静かな声と真っ直ぐ私を見た瞳。

私は太一の真正面にペタンと座ると、震える声で彼の名を呼んだ。

「……太一……」

長い睫毛が影を落として、彼は眼を閉じている。

私は膝に置かれている太一の手をそっと握った。

「太一、ごめんね。それから、ありがと」

「もっかい言って」

急に眼を開けた太一に息を飲むと、彼は寂しそうに笑った。

「夢輝さんが戻ってきて安心した」

その笑顔は本当に優しかったけど、同時に凄く傷ついて見えた。

ああ、と思った。

彼は……分かっているのだ、何もかも。

「ご、めんっ……太一っ、私、なんて」

次の瞬間、太一が膝で立ち上がると私をギュッと胸に抱いた。

「大丈夫だよ、夢輝さん」

ああ、私はなんてダメな女なのだろう。

七歳も歳下の男性に、いつも子供のように。

「私、今日ほど自分を嫌いになった日はない。太一、私、最低なんだ」

「夢輝さん、大丈夫だよ」

「やだ、太一、怒ってよっ!叱ってよっ!じゃないと私、苦しい」

太一が私の頬を両手で包んだ。

「じゃあ、僕が罰してあげる。それで、あなたの罪を許してあげる」

私は泣きながら太一を見上げた。
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