やっぱり俺のお気に入り
「彼女っていうか・・・今、未来は僕の生徒ですから、すぐに交際は出来ませんが・・・でも未来が卒業したらいずれは未来と・・・」



青山は未来のお母さんの言葉に声を荒げる。



それに比べ、未来のお母さんは冷静そのものだ。



落ち着いた様子で青山に首を横に振って見せた。



「ねぇ、尚吾君?・・・あなたを見ながら私はね、いつもあなたのお父さんを想い重ねているのよね・・・尚吾君は尚吾君なのに・・・そう・・・未来だって私の代わりではない・・・未来は未来の人生があるんだし、龍斗君の事を話してくれる未来は本当に幸せそうで・・・そんな未来を見ていたら、私も目が覚めた気がしたの。だからもういいのよ。尚吾君も、そして未来も・・・」



未来のお母さんはそう言い終わると少しだけ悲しげに笑って見せた。



青山のお父さんへの想いを青山に重ねていた事・・・・・。



それに対する安堵感と罪悪感。



きっと未来のお母さんなりに考え、思い悩んでいたんだろうな。



その悲しげで優しい瞳は真っ直ぐに青山を見ていた。



青山はそんな未来のお母さんにまだ何か言いたそうだったが、



「・・・・・ごちそう様でした。また来ます。今日はこれで失礼します」



と、それだけ言って部屋を出て行った。

< 181 / 296 >

この作品をシェア

pagetop