◇ヌードで魅せて◇

カメラ越しの瞳



「文化祭まで時間がないですよね?」


文化祭まであと1週間。

校内どこもかしこも文化祭の準備で騒がしかった。


授業も午前中だけ。

午後はそれぞれ準備で明け暮れる。


文化祭は運動部よりも文化部のほうが忙しく、そして気合いが入っているのだけど。

目の前のこの人は、一向に作品を撮ろうともしない。


あたし自身も、クラスのメイド喫茶の準備のほかに美術部の作品だって仕上げなければならないわけで。

そんなに先輩に時間を使えないはず、なんだけど。


放課後。

この場所に寄り道していくのがあたしの日課になっていた。


吉良先輩の秘密基地。

案外ここは、居心地がいい。


「いいんですか? 写真撮らないんですか?


全然焦る気配のない先輩を見て、こっちのほうが焦っちゃうくらい。


相変わらず口数は少ないし、無表情だし。

何を考えているのか、全然わからない。

写真部の作品のテーマが何かも教えてくれないし。

この人は、本当に写真を撮る気があるのだろうか。

だいたいカメラの手入れをしているか、今日みたいにパソコンに向って何かをしていることが多いんだ。


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