After -deconstruction "God Ideology"
「な,何を言うんだ,ユテーラ.

 そんなことにはなっていないから.

 心配しなくていいから.」

ネコハクは今まで隠していたように慌てふためく.

ユテーラは対照的に動じず,手を振ってくれている.

分はユテーラにあるようだ.

「うん,ありがとう.

 また来るよ.

 ―もし,旅が終わって,居場所がなかったら,ここに住もうかな.

 僕はリルラー族ではないけれど.」

カハシの不安も消えたようには思えなかったが,それでも顔の皮が微笑んでいるように見える.

「君なら大歓迎だよ.

 君はきっと,リルラーの心を持ち合わせている.」

ネコハクも何とか取り戻し,カハシに手を出した.

カハシも手を出した.

「もういいだろう.

 行くぞ,カハシ.

 ネコハクももういいな.

 私もこれで最後だ.

 もうここに来ることもあるまい.

 リルラー族はわからないが,魔法の時代は終わる.

 私も無用になる.

 そういう時だ.」

ネコハクの表情が曇った.

一回だけうなづくと,そのままだった.

「ナルカ(※).」
★ナルカ:移動魔法.屋根のある場所では使えない.

ネコハクとユテーラがどんどん小さくなっていく.

それでもなおどこにいるかわかるような気がした.
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