密星-mitsuboshi-
嫉妬
翌日、水曜日
三木との約束の日である
昨夜、渡瀬からの連絡は無かったが
かわりに三木から待ち合わせについてのメールがきた

“19時に木賀駅前でお待ちしてます
 楽しみにしています
             三木”

19時に待ち合わせをし、20時前から食事をし始めたら十分0時前までに帰れると頭の中で計算しながら、早紀は三木に了解メールを返信した

会社についてみると、渡瀬は自席でパソコンを睨みつけていた
まだトラブルが全て解決していないのか、すぐそばにはシステム部の桃井の姿もあった

早紀は一日中、落ち着かず
渡瀬の横顔や、立ち歩く姿をを目で追った
なにが気になるのか自分でもわからなかったが、ただなんとなく目がいってしまう

夕方過ぎから渡瀬はまた会議で席を空けていた
渡瀬が戻ってくるより前に終業の時刻を告げるアラームが鳴り、
早紀はそのまま会社を出ることになった

18時30分に会社を出て、少し早かったが三木の指定した場所に立ち三木を待った
だが肝心の三木は19時を過ぎても姿を見せなかった

早紀は手に持ったスマホを見た
時刻は19時50分になったが三木からは電話もメールもなかった

しびれを切らした早紀が、三木の電話番号を開き
通話ボタンを押そうとした瞬間
振動と一緒に、画面に三木の名前とcallingの文字が表示された

『遅れてすみません!
 話しの長いお客さんにつかまってしま
 いまして!
 今どこですか?!』

「良かった。お仕事だったんですね
 今駅前にいます」

『わかりました!
 2分だけ待ってください!』

三木はそう言うと電話を切った
それから本当に2分後、交差点の向こう側に三木の姿が見えた
早紀の前まで全力で走ってきた三木は
キツそうな顔でハァハァと息を切らした

「申し訳ありません!
 連絡もせずに待たせるなんて
 終わってすぐに全力で走ってきました
 待っててくれて
 ありがとうございます」

三木はネクタイを少しだけ緩めてにっこり笑った

「お仕事じゃしかたないですよ
 気にしないでくださぃ
 ところで、どこのお店ですか?」

「あ、はい。そうですね
 では行きましょう」

三木はそう言うと木賀駅の改札につながる階段に歩を進めた

「三木さんっ、お店ってこの辺りじゃ
 ないんですか?」

「はい。北船橋にあるんです。
 ちょっと距離あるんですけど是非一緒に
 行きたくて」

「北船橋…ですか」

北船橋とは木賀駅から乗る南央線の千葉方面電車に乗って10個目の駅で
各駅停車に乗ると50分ほどかかる
地上線への乗り換えができる比較的大きな駅だ
だが早紀の家とは全く逆方面の駅になる
渡瀬と交わした0時までに家に着くという約束を守るためには
思っていたよりも早い電車に乗らないといけなくなった

2人がホームにつくと丁度千葉方面の快速電車がドアを開けて停車していた
発車ベルが鳴り始め、急いで車内へと駆け込んだ

「運がいいですね。快速に乗れました
 思ったより早く着きますね」

「そうですね!
 ところで三木さんは北船橋はよく行く
 んですか?」

「はい、僕、自宅が市川の寮なんです。
 市川は北船橋で地上線に乗り換えて
 2つめなので」

「会社の寮に入ってるんですか?」

「はい。入社する時にたまたま住んでた
 ところが更新になってどうしようかと
 思っていた時に
 寮があいてると言われたので」

「そうだったんですか」

「なので北船橋で何か食べて帰ること
 よくあるんですよ。
 それでみつけたお店なんです」

「なるほど。それで北船橋」

タイミング良きな乗ることができた快速電車のおかげで35分ほどで到着した
三木に案内されたのは駅から5分ほど歩いたところにある小さな居酒屋だった

今時珍しく、店先に赤い提灯がぶら下がり木造づくりで古い感じがしたが
どことなく懐かしい雰囲気のある店だった
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