プリテンダー
翌日。

もしかしたら矢野さんの物かも知れないと思った僕は、部屋に落ちていたボタンをポケットに入れて出社した。

なんとなく食欲がないので、今日の弁当は、梅とシソを刻んだ物とちりめんじゃこを混ぜ合わせた御飯で作ったおにぎり。

そしていつものように具だくさんの味噌汁。

こんな時でも朝早くから弁当を作ってる辺りが地味なのか。

それでもこれが僕なんだから仕方ない。


料理も地味だと言われたのは、かなりショックだった。

美玖はいつも僕の作った料理を美味しいと言って食べながら、心の中では、また性格と同じで地味な料理だなー、なんて思ってたわけだ。

一度手伝おうとしてくれた事があったけど、美玖は包丁もまともに持てなかったから、僕がやるからゆっくりしてていいよと言って、傷付けないようにやんわりと断った。

あんなんでこの先大丈夫なのか?

付き合ってる時は僕が作るからそれでもいいと思ってたけど、もし僕が料理のできない男だったら、美玖は僕のために料理を作ってくれたりしただろうか?

もしかして料理ができようができまいが、僕以外の男になら、相手を喜ばせるために苦手な料理にも挑戦したりするのかも知れない。


…今更考えたって仕方ないな。

結局僕は、美玖に愛されていなかったって、そういう事だ。



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