プリテンダー
そう言えば、金曜の夜はどうやって家に帰ったんだっけ?

タクシーを待っていたところまでは覚えているんだけど、その後の記憶がない。

おそらく矢野さんがタクシーで送ってくれたんだとは思う。

だって杏さんは僕の家なんか知らないし、女性の杏さんが酔った男の僕をいくらなんでも一人で送ったりはしないだろう。

夢の中では杏さんがそばにいたんだけど。


それにしても変な夢だったな。

夢とは言え上司の杏さんにあんな事をするなんて、僕はよほど参ってたんだと思う。

そうじゃなければ、よほどの欲求不満だ。

よく考えたら、美玖とは誕生日以来会っていなかったし、もちろん他の女の子としたりはしないから、1ヶ月ほどご無沙汰だ。

僕は杏さんを女性として意識した事なんて一度もないし、嫌がる杏さんをどうにかしてやろうなんて思った事も、もちろんない。


それにしてもリアルな夢だったな。

今まで見たこともないような杏さんの表情とか、思ったより柔らかい感触が鮮明に蘇る。

あー、こりゃ重症だ。

早いとこ美玖の事は忘れて、新しい恋を見つけよう。





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