プリテンダー
なかなか離れてくれないことに困り果てていると、渡部さんが目を潤ませながら顔を上げた。

お、この顔ちょっとかわいいかも。

「私の事、嫌い?やっぱりまだ美玖が好きなの?」

「いや…そういうんじゃないけど…。ただ、想定外の事言われてちょっと戸惑ってる。地味でつまらないってフラれたとこだし。」

「全然地味でもないし、つまらなくもない。私はそのままの鴫野くんが好き。美玖みたいに鴫野くんを裏切ったりしないよ。」

突然、渡部さんが僕の首の後ろに手を回し、伸び上がって唇にキスをした。

あまり慣れてはいなさそうな、お世辞にも上手とは言えないキスに、ほんの少し欲情を煽られる。

えーっ…と…。

驚きはしたけど、僕の事好きだって言ってくれてるし。

僕だって終わった恋をいつまでも引きずってないで、前に進む必要はあるんだし。

この感じだと遊んでいる様子でもない。

まぁ…悪くない…かな?

僕はされるがままに渡部さんの下手くそなキスを受け入れる。

渡部さんの手が少し震えている事に気付いた。

なんだ、かわいいじゃん。

ちょっとビックリさせちゃおうかな。

イヤだって言われたらそれまでだ。


< 45 / 232 >

この作品をシェア

pagetop