プリテンダー
お祖父様は立派な顎ひげをさすりながら、うーんと唸った。

「杏がそこまで言うとはな…。わかった、この話は一度白紙に戻そう。」

その瞬間、イチキの御曹司は青ざめ、杏さんは嬉しそうに頬を紅潮させた。

…巻き込まれているとは言え、他人事ながら面白い。

「ただし、おまえたちの言う本気とやらを見せてもらおうか。」

……え?

なんですか、それは?

「見たところ、そこの若いのは庶民だな?結婚を許すのは、そんな男と暮らして本当にうまくいくのか、この目で確かめてからじゃ。」

えーっと…どういうこと?

「わかりました。私たちがどれだけ真剣に将来を考えているか、お見せしますわ。」

え、ちょっと待って。

それってつまり…僕と杏さんが一緒に暮らすって言うこと?

もしかしてその先に、ホントに結婚とか…。

いやいやいや、有り得ないでしょ?!

杏さんは僕の上司で、僕はしがないサラリーマンだよ?

なんでこんな事になったんだ?!

「それでは近々、二人の暮らしぶりを見に行く事にしよう。楽しみだのう…。」

お祖父様はニヤリと笑いながら、すれ違い様にすごい力で僕の肩を叩いた。

こっ…こえぇー!!



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