プリテンダー
思わぬところで、僕の自尊心に火が点いた。

こうなりゃとことんやってやる!!

「失礼ですが…あなたは?」

僕が目一杯冷静さを装って尋ねると、その男は敵意を剥き出しにして僕を睨み付けた。

「俺は市来 穂高(イチキ ホダカ)。杏のお祖父様に選ばれた婚約者だ。」

イチキ…?

イチキって、あの運搬業国内最大手のイチキコーポレーションか!

さしずめコイツは、イチキコーポレーションの御曹司ってとこだな?

そんな婚約者がいる杏さんって…一体何者?!

いやいや、杏さんのために、ここで負けるわけにはいかない。

ハッタリでもなんでもかましてやろうじゃないか!!

「失礼しました、あなたは杏さんのお祖父様に選ばれた方なんですね。でも僕は、杏さん本人に選ばれてお付き合いしているんです。」

僕がドヤ顔でそう言うと、イチキの御曹司は悔しそうに顔を歪めた。

「お祖父様、お願いします。私は彼を愛しています。他の人と結婚なんて微塵も考えられません。どうか、今回の縁談はなかった事にしてください。」

愛していますって…。

杏さん、恋愛経験もないのに、芝居とは言えそんな事が言えるんだ。

これにはかなり驚いた。


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