そして俺は、君の笑顔に恋をする

「テレビ、つけるか」



顔をひっかこうとするオリオンを押さえ付けながら、工藤はリモコンに手を伸ばした。


さすがに大きな部屋なだけあって、テレビ自体も相当な大きさ。


壁の中央に位置するように設置された超・薄型の高性能テレビのスイッチを入れる。


カチカチとチャンネルを変えながら工藤は大きく欠伸をした。


眠そうに目をかく姿に黒瀬は、



「…工藤さん、寝てる?」


「え、」



確か昨日も遅くまで仕事をしていたはず。


ちゃんと寝ているのだろうか。



「…あー俺、元々あんまり寝ないんだよ。一日一時間でも大丈夫なやつ。だから気にしないで。心配してくれてありがとう」


「……べ、別に心配した訳じゃ…」



口ごもる彼女は可愛らしく、


最初に会った頃より随分と打ち解けたような気がして、工藤は小さく笑みを浮かばせた。




その時


ブブブブブ――――


と、テーブルに置いていたスマホに電話がかかってきた。




「わり、ちょっとテレビ見てて。ついでにコイツも頼む」


「あ、うん……」




リモコンとオリオンを手渡し、工藤はスマホを片手に部屋を出ていった。


画面を見た時の彼の不安そうな顔が少し気になったが、黒瀬は何も言わずに渡されたオリオンを優しく撫でた。


喉をグルグル言わせて甘えてくるオリオンを抱え、膝を折り体育座りのような格好でチャンネルをピコピコ変えていく。


休日の朝という事もあり、あるのはニュースばかりだ。



(一昨日の、あの事件、ニュースになってないかな…)



あの狙撃事件。


昨日はニュースを見る余裕もなく忙しくしていたから分からないが、今日はどうだろう。


そう思って、あるニュース番組でチャンネルを止めた。





可愛らしい女子アナが、にこにこと朝から愛想を振りまき話をする。


よく頑張るなあと思いながら話を聞いていると、それまで天気予報が流れていたその画面が突然切り替わり、画面の端に生中継の文字が出る。



『現場からお送りします!先ほど、都内のマンションで爆発騒ぎが起きた模様です!』



そこに映っていたのは真っ赤な炎と黒い煙を吹き出す窓。



『八時ちょうど、こちら東京都××区のマンションの一室で爆発が起きました。それに伴い火災が発生し、近隣へ被害が拡大しております!』



緊迫の表情で、赤く燃える炎を背にそう伝えるアナウンサー。



その画面を食い入るように見つめる黒瀬の表情は真っ青になっていく。



「黒瀬っ!!」


「!…工藤、さん…」



そこへ、工藤が電話から戻ってきた、


眉間にしわを寄せ、顔には焦りの色を浮かべている。


そしてテレビの画面に映るその真っ赤な映像を見て、状況を知る。



「黒瀬…」



黒瀬は工藤の声に耳を傾けながらも、画面から目を逸らさなかった。


そこに映るのは黒瀬にとっては見慣れたマンション。






燃えていたそこは、数日前まで黒瀬が住んでいたマンションで


爆発したというその部屋こそ、黒瀬が暮らしていた部屋だったのだから





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