リナリア
* * *
「あーおーいー!」
「んだよ、冷やかしにきたのか?」
「違いますー!緊張してるかと思って励ましにきてあげたのに!」
「あっそ。」
蒼は友人に誘われてカラオケ大会に出場することになっていた。本来は名桜と見ようと言っていたが、名桜は急遽学年主任の先生に声を掛けられて仕事に向かってしまったため、七海は一人になってしまっていた。
「こんな裏みたいなところで見ることにしたのか?」
「だって、名桜に仕事入っちゃって。」
「あいつも本当に忙しいやつだよな。」
「うん。でも、走り回ってる名桜、好きなんだよね。」
「ふーん。」
(本当は蒼だってそういう名桜が好きなくせに。)
それは言わない。それを言ってしまったら、気持ちの面でも表情の面でもいつもの自分を保てなくなることがわかっているからだった。
「…やっぱり、名桜と一緒に見ようかな。仕事の邪魔になっちゃうかな。」
「…あのさ、七海。」
「ん?」
「なんかお前、最近変じゃね?」
「え?」
蒼が距離を詰めてくる。いつもと同じ距離だが、今日はいつもと違う文化祭の日で、いつもと違って薄暗い。
「なんかあった?」
「…なんも、ない。」
「はい、嘘。」
「嘘じゃないよ!」
「変な間があったし、嘘だろそんなの。まぁ俺に言えねぇことなら無理に聞かねぇけどさ。」
こういうところが、七海が蒼を諦められない理由だった。名桜のことが好きなのに。自分に恋愛感情はないのに。それでも気にかけてくれる。長年付き合いのある『友達』として。蒼の優しさを年々ただの『好き』ではいられなくなる自分が嫌になる。そう思うとますます表情が歪むが、それを七海はぐっと堪えた。
「何変な顔してんだよ。」
「あのねぇ、仮にも女子に変な顔とか言わないの!私だからいいけど、他の子はダメだよ。」
「七海ならいいんじゃん?じゃあ問題なくね?」
「そういうことじゃない!」
「あっそ。」
いつか、蒼の想いが届いてしまったら。3人で一緒にいることはできなくなってしまうのだろうか。最近の七海はそんなことばかり考える。3人で仲良く過ごせるのも、誰も本当の気持ちを伝えていないから。誰かがその均衡を破ったら、今までみたいにはきっと過ごせない。
(この能天気男はなぁーんにもわかってないんだろうなぁ。)
そんな恨みを込めて、七海は少しだけ蒼を睨んだ。
「あーおーいー!」
「んだよ、冷やかしにきたのか?」
「違いますー!緊張してるかと思って励ましにきてあげたのに!」
「あっそ。」
蒼は友人に誘われてカラオケ大会に出場することになっていた。本来は名桜と見ようと言っていたが、名桜は急遽学年主任の先生に声を掛けられて仕事に向かってしまったため、七海は一人になってしまっていた。
「こんな裏みたいなところで見ることにしたのか?」
「だって、名桜に仕事入っちゃって。」
「あいつも本当に忙しいやつだよな。」
「うん。でも、走り回ってる名桜、好きなんだよね。」
「ふーん。」
(本当は蒼だってそういう名桜が好きなくせに。)
それは言わない。それを言ってしまったら、気持ちの面でも表情の面でもいつもの自分を保てなくなることがわかっているからだった。
「…やっぱり、名桜と一緒に見ようかな。仕事の邪魔になっちゃうかな。」
「…あのさ、七海。」
「ん?」
「なんかお前、最近変じゃね?」
「え?」
蒼が距離を詰めてくる。いつもと同じ距離だが、今日はいつもと違う文化祭の日で、いつもと違って薄暗い。
「なんかあった?」
「…なんも、ない。」
「はい、嘘。」
「嘘じゃないよ!」
「変な間があったし、嘘だろそんなの。まぁ俺に言えねぇことなら無理に聞かねぇけどさ。」
こういうところが、七海が蒼を諦められない理由だった。名桜のことが好きなのに。自分に恋愛感情はないのに。それでも気にかけてくれる。長年付き合いのある『友達』として。蒼の優しさを年々ただの『好き』ではいられなくなる自分が嫌になる。そう思うとますます表情が歪むが、それを七海はぐっと堪えた。
「何変な顔してんだよ。」
「あのねぇ、仮にも女子に変な顔とか言わないの!私だからいいけど、他の子はダメだよ。」
「七海ならいいんじゃん?じゃあ問題なくね?」
「そういうことじゃない!」
「あっそ。」
いつか、蒼の想いが届いてしまったら。3人で一緒にいることはできなくなってしまうのだろうか。最近の七海はそんなことばかり考える。3人で仲良く過ごせるのも、誰も本当の気持ちを伝えていないから。誰かがその均衡を破ったら、今までみたいにはきっと過ごせない。
(この能天気男はなぁーんにもわかってないんだろうなぁ。)
そんな恨みを込めて、七海は少しだけ蒼を睨んだ。