リナリア
結婚式の裏側
* * *

「あれ?着替えはこっちでいいって言ったのに。」
「…一応、動けるちゃんとした服はありますよ。」
「似合ってる。髪も今日は結んでるんだ。」
「だって、結婚式って一度しかないじゃないですか。失敗が許されません。」
「はは。新郎新婦より気合入ってていいな。」

 名桜はというと、今日は結婚式に呼ばれていた。ゲストとしてではなく、カメラマンとして。今日はパンツと上は薄手のブラウスにした。髪は邪魔にならないように一つに結んである。高い位置では邪魔になるから低い位置に。

「全体の動きはこの前送った通りで、名桜は割と自由に動いていいと思うんだよね。」
「…結婚式の撮影って初めてなんですけど…。」
「俺も結婚式出るの初めてだけど。」
「え、そうなんですか?」
「え、そうだよ。」
「意外です。」
「そんなないでしょ、結婚式。」
「そう、かもしれません。というかイメージが全然つかめなくて…。」
「挙式?からの披露宴だったかな?俺もよくわかってないけど。」
「…大丈夫ですかね、私。」

 人生でたった一度きりの、記念日。スタジオの撮影なら撮り直しがきくが、そうじゃない。戻ってもらうことはできない。大事なシーンが、きっとどんどん進んでいくのだろう。
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