アシスタント!!
何より気に入ったのはそこだろう。


「ご飯でも行きますか」


原稿が仕上がり、担当に渡すと、那住が労いの場を設けてくれる。

「私は遠慮しときます」


直見はいつも断り先に帰る。


息子は高校を出、就職して寮にいるので、慌てて帰る必要もなかったが。


「たまには、付き合え」


普段あまり無理強いすることがなく、その言葉にやむなく付いていく。


行くのは駅前のはずれの居酒屋と決まっていた。


「さすが直見さん、仕事早いですよね」


「プロになればよかったのに」


若いアシスタントにおだてられる。


「まあ、呑め呑め」


言われるままに酒が進む。


基本、ビールか酎ハイしか飲まない直見は、

この空気で自分を見失うのが怖かった。


アシスタントは男2人で、2人とも現役の大学生。通いで時間を見て手伝いに来る。


漫研にいるらしい、黒縁眼鏡で小太り、汗っかきの、いかにもオタクの木下(キノシタ)。


夏場になると、よほどのときはエアコンを付けるが、基本扇風機だ。首にはタオルが掛かっている。


もう1人は色白で線の細い、グラフィックデザインの専門学校生で縁なし眼鏡のインテリタイプの茅島(カヤシマ)。


仕事に関しては2人とも、真摯で真面目で、気が合った。


今どき、素直ないい子だと、大人2人も認めていた。


那住の元で2年が経ち、居心地のよさと那住への好意が増しているのがわかっていた。


迂闊に酒を飲んだら、自分が女であることを思い出し、空気が壊れるのが怖かった。


「直見は、再婚する気はないんですか」


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